サカナトビート 寿司職人の休日

旬の食材が知りたいし休日も舌鼓を打ち鳴らしたい

寿司職人20年の私が青鋼の本焼きからステンレス鋼の柳刃包丁に替える2つの理由、ステンレス鋼のメリットデメリットも考えてみました

実に10年ぶり!

カウンター内で使う刺身包丁、柳刃包丁(※以下ヤナギと表記)を新調しようと、行ってきました合羽橋道具街

まるで遊園地!

寿司カウンターで使うヤナギはステンレス鋼が良いです。最近しみじみ思いまして、現在使用中の「青一鋼 水本焼き」からの鞍替えです。ヒヨってんな~と思われてもしかたがない...否!そこには確固たる理由があるんです!ステンレス鋼の方が良い理由を挙げていきます。

 

錆びにくい

寿司カウンターの中には鋼の敵がいっぱい。酸性、要するに酢や塩を使っている物ばかりの寿司の調理場。我々寿司職人は一つの作業のたびに布巾をすすいで包丁を拭く、まな板を拭く動作が身体染みついています。まな板周りを清潔に保つ、それぞれの食材の痕跡を残さない、等目的は色々ありますが実は包丁の錆び防止のため、というのがメインの理由といっても過言ではないです。少なくとも今の自分は間違いなくそうですね。青鋼、白鋼は程度の差はありますがいずれも錆びやすい素材でして、どんなに気を使っていても必ず錆びます。もしかしたら自分しか判らない位の錆びかもしれませんが作業中に錆が少しでも浮いてくると、もう気になってしまってダメです、私は。 そんなストレスから解放してくれるのが、ステンレス鋼というわけです。

値段が比較的安い

包丁専門店に行くと、扱っている物の半数以上は青鋼、白鋼の物でいわゆる本格的なヤツ~って感じで飾ってあります。値段も、大きさにもよりますがヤナギなら2万円を下回るものは無いんじゃないかな。それに比べると、ステンレス鋼の中でも最もポピュラーで扱いやすい「銀三」正式名称 銀紙三号鋼のものは若干の割安感が。青鋼、白鋼の中にもグレードというか純然たる価格差が有って、それはひとえに鋼自体の硬さに寄るところが大きいんですが、ステンレス鋼は基本的にはすべて硬い部類に入ると思います。ステンレス鋼の中には先に出た銀三の他に、V金10号、V金1号と種類があります。いずれのステンレス鋼も青鋼、白鋼と比較して硬度・切れ味でひけとらず、それでいて比較的割安で購入できます。

メリットとデメリット

実はこれ、同じ事柄をから見るかから見るかの違いの話。

錆びを気にしない=包丁を丁寧に扱う意識が低くなる とか

硬度が高い・切れ味が長持ちする=欠けやすく刃にねばりがない・研ぐのが難しい

等々。長所と短所は表裏一体、結局のところ、何かを優先するならば別のデメリットが生れることを認識して対応策を講じればいいのです。

霞と本焼き

今回私が購入したのは、V金10号の「尺(300㎜)ヤナギ  たしか4万5千円位かな。というのは鋼の本体の回りを軟鉄で覆う造りの事。それに対してのみで造られる包丁のことを「本焼き」といいます。同じV金10号で本焼きを注文すると値段は倍以上、納期は最長6か月をみてもらうというので今回は諦めました。だって一刻も早く欲しいんだもん。一寸した見栄で本焼きが欲しい気持ちもありますが切る部分は同じですから、あとは研ぎの技術と習慣をより向上させていこう。先に挙げたステンレス鋼のデメリットの対応策の一つが研ぎの技術向上でもありますし。

霞と本焼きの専門的な解説は↓コチラを参照してください。私が購入したのはコチラのメーカーの物ではありませんが

本焼きと霞 | 燕三条製包丁の藤次郎株式会社|TOJIRO JAPAN

 

実は、この文章を書いている時点でまだ包丁が手元に届いていない…!

もう2週間も経つのに~ まだかなまだかな~

新物が到着するのはなんであれ楽しみなこと。今回の購入にあたり鋼の事を勉強し直せた事もとても良かったです。なんでも再発見というのはあるものです。

錆びのストレスからの解放(予定)でプチハッピーな日々が待っています!

皆様にも幸が訪れますように~~~